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当時の英語レベル


キダムでは多い時で、
約23の異なる国出身の人たちと仕事をしていました。

同じ国出身の人が何人もいれば、
その国の母国語も多く飛び交っているわけですが、
共通言語として使われているのは英語です。

入って数年の後には、
英語を使って普通に仲間と会話できていましたが、
最初から今のように英語ができていたわけではありません。

当時の英語レベルは、
「何となく理解できる感じだが、コミュニケーションを取ろうとすると、うまく伝えることができない」
といった程度でした。

アーティスティックディレクターとの出会い


仕事で海外に出ていくにあたり、
不安もありました。
その不安を取り除いてくれたのが、
その時にキダムの舞台監督をしていたアーティスティックディレクターでした。

シルク・ドゥ・ソレイユと契約した後、
モントリオールにある本部へのトレーニングに行くその出発の前日に、
キダム日本公演のためのプレスカンファレンスで来日していたアーティスティックディレクターに、
初めて会うことができました。

あいさつはできたものの、
その後の受け答えはしどろもどろで、
きちんと通じていたのかどうか。

会話が続かなくなっていたその時、
アーティスティックディレクターが次のように声をかけてくれました。

「君はなわとびで選ばれて、英語の能力で選ばれたわけじゃない。
君が持っている実力を十分に表現してくれればいいのだから」


この言葉が、気持ちをふっと軽くしてくれたことを覚えています。

英語で何を話すか


もちろん自己紹介や簡単な受け答えなど、
海外に出ていくとしたら最低限の英語の勉強はしておいた方がいいと思います。

その最低限の英語の勉強ですが、
実はほとんどの日本人はすでに十分にしているのじゃないかと思ったことがあります。

モントリオール本部のトレーニングでは、
英語を母国語としないアーティストのための「英語クラス」もありました。

使われていたテキストは中学や高校で習う程度のレベルだったので、
問題集を説くような感じで回答できなくもありません。
例えば、canの使い方や過去完了、といった感じです。

同じクラスを受けている仲間を見渡すと、
テキストが理解できていない人も多くいるようでした。

どちらかというと学生の頃は、
英語の授業が苦手でした。
それでも中学・高校で学んだ六年間という英語の時間は、
基礎を学ぶ上で十分に長い時間勉強していたのだと思います。

英語クラスの中で仲間との違いを感じたことが一つありました。
それはコミュニケーションに関してです。

彼らはテキストの問題は十分に回答できていないように見えましたが、
人とのコミュニケーションはうまくできているように感じます。
その一方で自分はテキストの問題は回答できるかもしれないが、
コミュニケーションがうまくいっていないと感じていました。

それがなぜなのか考えてみたところ、
次のことに気が付きました。

「話せるかどうか」を主にしていた自分と「何を話すか」を主にしていた彼らとの違いです。

彼らは「これを話そう、これを伝えたい」ということを、
とにかく言葉に出して話していました。
そして分からないことがあったらすぐに質問しています。

そういったことを学んでからは、
自分のことを話し始め、
特になわとびのことを話題にして会話の中に入っていきました。
実際に話してみると、
きちんと答えが返ってきます。
その答えを参考にして、
受け答えの時にはこのように言えば伝わるのだ、
ということを学んでいきました。

トレーニング時においても、
なわとびや体使った動きに関する内容での話はできます。
そして、説明とその答えで学んでいき、
分からないことはすぐに質問します。
そのことの繰り返しで、
英語を上達させていくことができました。

学んでいた基礎と、個人の体験が結びついて、理解になります。

もちろん選ぶ仕事によっては、
要求される英語のレベルも変わってくることと思います。
その場合には、
きちんとできる状態にしておくことも必要です。